近況報告
2020年10月16日
テレマークの要塞
福島原発の三重水素の海洋投棄が決まったようで、昨晩観たTBSテレビのニュースでは権力を忖度してか、風評被害を気にしてか「汚染水」としか表現せず、その本体である放射性物質の三重水素という表現は使っていません。海洋投棄はもう、「決まり」なのでしょう。「重水素」と聞いて第二次世界大戦中のノルウェーの重水素工場を破壊する工作員を描いた活劇、「テレマークの要塞」を想い出します。学者さん達は汚物を海にポイ捨てする政府の決定をどう評価しているのでしょう?御用学者会議とは別に、学者としてちゃんと意見を出してほしいものです。 アメリカではすごいことになっています。今後1000年以上、いや人類史上、消えることのない論説が伝統と歴史ある医学雑誌、New England Journal of Medicineの冒頭に編集者の総意として掲載されました(1)。私が英語の大学入試問題を作れと言われたら、この「Dying in a Leadership Vacuum」という文章を題材にして
「次の文章を読んで、この雑誌の編集者が自国の大統領を最も強い口調でこき下ろしていると思われる部分はどれか?最初と最後の語を記せ。」
とします。正解は「Covid-19」から「jobs.」まで。つまりこの論説の最初から最後まで全部。とにかくすごい内容です。「彼ら」と表現し、この中には共和党の元老院議員や住民代表議員、政権に任命された行政官などもふくまれているように思われます。例えば「日本のような高齢社会」や他の裕福でない国などと比較しても圧倒的に死亡者が多い点などを言葉を尽くして終始「評価」しています。Nature, Scientific Americanなど他の医学雑誌、科学雑誌も立場を明確にして論評してします。ものすごいエネルギーです。報復もある? これからとんでもないことが起こる気がします。
それに引き換え、政権が情けないマスクを国民に配っても失笑されるにとどまっている日本は、皆さん何事にも総合的俯瞰的でおとなしく、未来永劫、平穏なのでしょう。

(1)The Editors; “Dying in a Leadership Vacuum” N.Eng.J.Med. vol.383;15, pp1479-80. 2020.