2026年5月30日
高校生の社会教育?
学校の社会教育が議論されています。
1970年は私が中学に入学した年です。大阪では「こんにちわー」の万国博覧会が大盛況。テレビではTBSで『アテンション・プリーズ』が大ヒットしていました。フライト・アテンダント役の紀比呂子(きのひろこ)さんがヒロインです。まさに一世を風靡していました。その年に制作、公開されたやはり紀比呂子さん主演の映画、『地の群れ』(ATG)は中学生の私にとっては衝撃的な内容でした。学校の教育の一環として年に3回開催される「映画観賞会」で観ました。公開から2,3年ほど後だったと思いますが、まだ中学生だった私はこの映画の情報量の多さに圧倒されました。物語の舞台は戦後の佐世保の町です。いろいろな人たちがコミュニティを作って暮らしている状況でした。長崎の原子爆弾攻撃で被爆して後遺症を負った人たち、古くから人々に蔑まされて「その地域」で育ってきた人たち、朝鮮半島からの徴用工、左翼活動家、が登場します。それらの人々の対立やそれぞれの人々が持つ悲しい歴史が描かれていました。差別、被爆者、左翼活動家、など現代の為政者が完全に打ち消したい記録なのではないかと想像します。
映画では平穏な団地で幸せそうに子育てをする女性達の映像が流れ、終わります。印象的なシーンが目白押しのこの作品の監督は原一男氏です。原作者は井上光晴氏という小説家にして詩人。瀬戸内寂聴さんとの深い深い親交は映画にもなっているようです。
今でも脳裏に焼き付いた衝撃的シーンは極めて効果のある、教育機関としての優れた社会教育だったと思います。決して偏った一方的な理解を強要するものではありませんでした。
社会派と銘打った映画にはものすごい教育力があると思います。もちろん、映画は一つの解釈が映像化されたもの。しかし作り手の熱意というか、覚悟が感じられます。自分が死んだ後も永遠に映像は遺る、そんな彼らのつぶやきが聞こえます。
エリザベス・テイラー主演の『クレオパトラ』のラストシーンではオクタビアヌスの副将、アグリッパが侍女に尋ねます。「最後はどのようでしたか?」
侍女は答えます。「そのように、なされました」
人類映画史上燦然と輝くこの超大作の観客を決して裏切らない、「そのような」終わり方でした。
制作者はそんな想いで、この映画を「そのように」締めくくったと想像します。単なる私の想像でしょうか?いや、間違いないと思います。映画人の心意気が濃縮された映像はまだまだこの世に残されていると思います。見逃す術はありません。