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大動脈弁狭窄症-AS-
大動脈弁狭窄症とは

大動脈弁は左心室の出口にある弁です。正常な大動脈弁は透き通るほど薄い三枚の膜でできており、これが心臓の拍動にあわせて閉じたりしまったりしています。
この弁が、理由もなく、石のように固くなり、厚さも一センチ以上に肥厚する大動脈弁狭窄症(AS)と言う状態があります。
患者さんの症状は出にくく、どんどん病気が進行していくと、心臓の力が弱まりどうしようもない心不全の状態になってしまいます。この状態に至る前でも、突然心臓が停止する心室細動という状態になってしまうこともあります。
原因は「動脈硬化」などとバカの一つ覚えみたいに説明する医師もいますが、本当のところは全くわかってはいません。

大動脈弁狭窄症の大動脈弁を覗き込んだところ

大動脈を切り開いて大動脈弁狭窄症(AS 圧較差58mmHg)の大動脈弁を覗き込んだところ。
大動脈の弁は
(1)石のように石灰華しており、
(2)分厚く肥厚していて、
(3)動か無い状態になっており、
左心室の出口にある障害物でしかなくなっている。

心臓の出口がどれぐらい狭められているか、それによってどれぐらい心臓が困っているか、これについては心臓超音波検査ですぐに判明します。さらに圧較差(△P)とう数値でどれぐらい左心室から拍出される血液が邪魔されているか、はっきりと示すことができます。
50から60mmHG以上の圧較差が計測できる患者さんでは心臓は相当に危険にさらされていると考えられます。
大動脈弁がそう痛んでいないときでも聴診器で聴くと心臓の雑音が明らかです。心臓の雑音が指摘された人はまともな病院ですぐに超音波検査を受けるべきです。

大動脈弁狭窄症(AS)の手術

大動脈弁狭窄症では大動脈の弁をきれいに切り取って人工の弁に付け替える治療方法しかありません。これは全身麻酔で人工心肺を使用し、心臓を停止させて行うしか今の所方法はありません。欧米では手術がどうしても困難な条件に限り、カテーテルで大動脈弁を破壊して取り除き、人工弁をすっぽりとはめ込む治療法が試みられていますが、まだ試みの段階であると認識しています。

大動脈弁狭窄症の手術画像1大動脈弁狭窄症の手術画像2大動脈弁狭窄症の手術画像3

手術では悪くなった大動脈をきれいに切り取ります(写真左端)。次にしっかりとした糸で、生体弁を縫い付けます(写真中央)。生体弁がきれいに取り付けられたら(写真右端)大動脈を丁寧に閉鎖します。

取り替える人工弁は牛の心膜(心臓を包み込んでいる袋状の丈夫な膜)を使った生体弁と言うものが用いられます。一般的に、65歳以下の患者さんに心臓の弁の手術を行う場合、機械弁という、ワーファリンを必要とするけれども半永久的に長持ちする丈夫な材質のものを用います。ワーファリンは血液の凝固機能を減弱させる薬剤です。一方、生体弁はワーファリンが必要でないかわりに、機械弁のように半永久的に長持ちするとは考えられません。