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midCABG
midCABG(ミッドキャブ)とは

(1)小さな傷で、
(2)人工心肺を用いず、
(3)短時間
で行う冠状動脈バイパスのことです。 小さな傷口から体の中を覗き込むようにして心臓の表面(全面)にある左前下行枝に、左内胸動脈という、胸板の内側を走っている動脈を心臓が動いている状態(通常の冠状動脈バイパス手術では心臓を停止して行う)縫い付けることをやります。左前下行枝とは心臓の筋肉に血液を供給している冠状動脈(全部で3本ある)の中で最も重要なもので、かつ、最も高い頻度で動脈硬化が起こりやすい血管です。
標準的な技能を持った心臓外科医が行えば、大概の場合2時間以内で終了し、従って、患者さんはより短い期間で退院できる手術方法です。
余談ですが、この手術方法の出現により、これまでの権威や地位だけを利用して地位を守ってきた心臓外科医が社会から識別され淘汰される状況になりました。手術を行う外科医個人の責任を棚にあげ、また、個人の技能をひた隠しにしてきたこれまでの日本医療はもう立ち行くことができなくなりました。下の写真は私(右)と、友人で、この方面で先駆的な業績をあげたアントニオ・マリア・カラフォーレ(イタリア)医師。

1996年12月に手術したY氏(73歳)の手術後のキズの様子

1996年12月に手術したY氏(73歳)の手術後のキズの様子

皮膚を切開したところ

皮膚を切開したところ

アントニオ・マリア・カラフォーレ(イタリア)医師と南淵医師

アントニオ・マリア・カラフォーレ(イタリア)医師と南淵医師

右の模式図はミッド・キャブの概念図です。冠状動脈への血流の新しい道筋、つまりバイパスには左内胸動脈を用います。左内胸動脈は手に向かって流れている鎖骨下動脈から枝分かれして、胸板の内側を走っている血管で、心臓のすぐ近くを通っています。
通常の冠状動脈バイパス手術でもバイパスとして世界中で最も頻繁に用いられている血管です。

ミッド・キャブ概念図

皮膚を切開したらまず第4助骨をあけ、そしてすぐに心膜もあけ、LADがちょうど心臓の表面に露出していてグラフとしやすい状態にあるかどうか確かめます。 この時LADが筋肉や脂肪組織に埋もれていて見えない時は手術を止めましょう。今まで約460例経験しましたが、まだ途中で止めた症例はありません。しかし、いつの日か、そのような症例に出会うことでしょう。

ミッド・キャブ参考画像1

次に左内胸動脈を準備します。頭側の助骨を持ち上げると視野は良好です。

ミッド・キャブ参考画像2

左内胸動脈が準備できたら、今度はLADを絞扼する糸をかけます。こうすることで吻合している最中に吻合部分から出血しないよいうにします。

ミッド・キャブ参考画像3ミッド・キャブ参考画像4

心拍動下の吻合です、Stabilizerという危惧を用いることもありますが、あくまでも補助的なものです。心拍動か下の吻合は那須の与一ほどの技術が必要という訳では決してありません。通常の冠状動脈バイパス手術で培われた技術と経験が物をいう手法です。

ミッド・キャブ参考画像5ミッド・キャブ参考画像6

少し離れたところで、グラフトと冠状動脈に糸をかけ、あとでゆっくりと引き寄せます。細心の注意を要する瞬間です。外科医にとっては非常にストレスのかかる手術です。私はいつも恩師に嘲笑される事がないようにと緊張して手術を行っています。

ミッド・キャブ参考画像7

吻合した終了したところの写真です。吻合が終わったグラフとは猫の手のような形になるはずです。(上の絵はちょうど90度角度がずれています)自分自身の裁量で、インディペンダントに通常の冠状動脈バイパス手術を500例以上行った心臓外科医がこの手術を手がけるようにして下さい。

ミッド・キャブ参考画像8ミッド・キャブ参考画像9

■Y氏の術後1年後の造影画像

Y氏の術後1年後の造影画像1Y氏の術後1年後の造影画像2

■右冠状動脈に対して行ったmidCABGの術後造影(とう骨動脈を右内胸動脈に継ぎ足してグラフととしています)

Y氏の術後1年後の造影画像3Y氏の術後1年後の造影画像4